成年後見制度とは?
判断能力が低下している方を支援する仕組み
1.成年後見制度について
『後見』には「かげに寄り添い、人の世話を行い、助ける」という意味を持ちます。
昨今では認知症の方や高齢者が詐欺被害にあったなどのニュースも少なくありません。
セールスの説明をそのまま鵜呑みにしてしまい、契約をしてしまう。
この契約の要・不要の判断ができなく、言われるままに契約をしてしまい、さらに継続的な被害が生じてしまいます。
こういった被害を未然に防ぐために、本人の代わりに判断の出来る人を身近に置き、悪質業者から身を守るこのできる制度が必要です。
2000年4月1日、新たな理念を含めた制度が誕生しました。それが「成年後見制度」です。 成年後見制度では、かげで支える人を「後見人」といいます。
2.成年後見制度の理念とは
成年後見制度の理念は大きく分けて3つあります。
① ノーマライゼーション
「ノーマル」とは正常・普通を意味します。ノーマライゼーションとは「普通の生活を行う」という意味が込められています。認知症の高齢者や障がい者でも普通の人と同じように生活できるようにという考え方です。
後見人は、本人のどのあたりを支え、普通の生活が実現できるのかをしっかりと考慮し支援しなくてはいけません。
② 自己決定の尊重
本人が判断した決定を尊重しようという考え方です。後見人は本人の決定は必ず肯定するという意味ではなく、普通の生活・本人の今までの生活歴・周辺環境・本人の言動・本人を保護する立場など、総合的に判断を行い、その自己決定がふさわしいものであるかを見極めます。
③ 現有能力の活用
判断能力が低下しているといっても、無くなったわけではありません。本人が持つ現在の能力を最大限引き出し、活用しなくてはいけないという考え方です。
これら3つの理念から察するとおり、後見人は本人の財産を守るためだけに行動をするということではありません。むしろ、積極的に使用することも出てくることでしょう。
「成年後見制度」は、判断能力が低下していても、不当な契約などで財産を脅かされたり、尊厳を損なわれたりせぬよう、本人の人生をこれまでのような輝かしいものとしたまま、安心した生活を送ることの出来るよう支える仕組みなのです。
3.成年後見制度を利用出来る方
成年後見制度は、判断能力が低下している方を支える仕組みであるため、障がいの持つことによって生活に問題があっても、それだけを理由に成年後見制度を利用することはできません。主に下記のような方を制度の対象としています。
① 加齢による脳の老化
例:認知症など
加齢によって、認知症などの脳への障がい確率が高くなります。日本全体が高齢化しているいま、決して他人事ではありません。
② 先天的に脳に障がいある、または幼少時の病気を元に脳になんらかの障がいを受けた
例:知的障害者など
知的障害者には、親が亡くなった後のことが問題視されています。成年後見制度が新しくなり、この問題への取組が可能となっています。
③ 脳梗塞・交通事故・手術などの脳への損傷
例:高次脳機能障害など
これらが原因で物忘れ・記憶障害が生じたり、寝たきり状態となるケースもあります。
④ 社会的ストレスなどによる精神不安定
例:統合失調症など
さまざまなストレスを抱える現代社会において誰でも起こりうることです。
4.成年後見制度の種類
成年後見制度は、判断能力が低下している方を支える制度でもありますが、元気なときから将来にむけての対応をしたいという声に応えることも出来ます。
① 判断能力が低下している場合の仕組み
判断能力が低下した方を支える仕組みを「法定後見制度」と呼び、状態をもとに保護する優先度の 高い順から「後見類型」「保佐類型」「補助類型」の3類型があり、それぞれの後見人を「成年後見人」「保佐人」「補助人」と呼びます。
② 元気なときから将来に備えたい場合の仕組み
将来に向けて対応しておきたい仕組みを「任意後見制度」と呼びます。本人が「任意」のもと「契約」を行い将来に対応する仕組みです。契約を行った時点では後見人を「任意後見受任者」といいます。
将来、本人が認知症などで後見人が動くことになりますと「(契約が)発効」を伴い「任意後見人」として仕事を行います。なお、「(契約が)発効」するには、家庭裁判所によって「任意後見監督人」の選任が必要です。
5.成年後見制度の利用例
さまざまな種類があるため、どのようなケースでどれを利用したら良いのか、いくつか例を挙げますので参考にしてみましょう。
① まだ元気で普通の生活を送れているが、将来どうなるか不安である。もし認知症を患った場合、高齢者施設などに入所する手続きや契約を代行してもらったり、費用を支払ってもらいたい。さらに、不動産管理もお願いしたい。
→ 成年後見制度が利用可能
② 使用予定のない高額な布団や健康商品などセールスに負けて断ることができない。
③ アルツハイマーと診断され、余生を自分の意思で悔いが残らぬ人生を謳歌したい。
→ 本人が判断可能であれば法定後見人制度の補助類型と任意後見制度が利用可能
④ 認知症の母の不動産を売却処分し施設への入所費用にあてたい。
⑤ 親が亡くなったとき、知的障害をもつ子供が心配。残された子供のために財産を残す手段や使用方法、施設入所への対応などどうしたらよいか?
⑥ 老後施設に入居している父の年金を勝手に持ち出す弟に困っている。
⑦ 体の不自由な母の世話に財産管理を行っているが、他の親族に疑惑を持たれている。
→ 保佐類型あるいは後見類型が利用可能